1.どのような病気ですか?
本邦より発信された新しい疾患概念として注目されています。血中IgG4高値に加え、リンパ球とIgG4陽性形質細胞の著しい浸潤と著明な線維化により、同時性あるいは異時性に全身諸臓器に腫大や結節・肥厚性病変などを認める原因不明の疾患です。罹患臓器としては膵臓、涙腺・唾液腺、胆管、腎臓、肺、後腹膜、動脈、中枢神経系、甲状腺、肝臓、消化管、前立腺、リンパ節、皮膚、乳腺など多臓器にわたり、病変は複数臓器に及ぶことが多いですが、単一臓器病変の場合もあります。
障害される臓器によって症状は異なりますが、頻度の多いものとしては、閉塞性黄疸、上腹部不快感、食欲不振、涙腺・唾液腺腫脹、眼・口腔乾燥、水腎症、喘息様症状などがあります。ステロイド治療が第一選択となりますが、減量、中断によって多くの例で再発が見られる難治性の疾患です。
2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?
IgG4関連疾患の患者数は、2009年には日本全体で約1~2万人いると推定されていました。IgG4関連疾患のうち膵臓が冒される自己免疫性膵炎は、現在まで継続的に全国調査がされてきました。初めて調査が行われた2002年は約 900人(人口10万人あたり0.82人)程度であったのが、2016年の調査では約13400人(10万人あたり10.1 人)と明らかに増加しています。これは診断能の向上だけでなくこの疾患が広く知られるようになったためだと考えられ、IgG4関連疾患全体の患者数も2009年よりは増えていることが予想されます。そこで本研究班では、現在IgG4関連疾患の患者数について全国調査を行っております。
3.この病気の原因はわかっているのですか?
原因はいまだはっきり分かっていませんが、各種自己抗体の存在、血中IgG4高値、IgG4陽性形質細胞浸潤、ステロイドが有効、喘息やアトピー性皮膚炎の合併率が高いことより、自己免疫性疾患あるいはアレルギー性・炎症性疾患と考えられています。
4.診断・治療法にはどのようなものがあるのですか?
診断には「包括的診断基準(表1)」と各臓器の「臓器別診断基準(表2)」を組み合わせて行います。ただし、できる限り組織診断を加えて、悪性腫瘍(癌、悪性リンパ腫など)や類似疾患(シェーグレン症候群、原発性/二次性硬化性胆管炎、キャッスルマン病、二次性後腹膜線維症、多発血管炎性肉芽腫症、サルコイドーシス、好酸球性多発血管炎性肉芽腫症など)を鑑別する必要があります。
治療としては、ステロイド投与が第一選択薬であり、比較的高容量で導入して、その後漸減して、低容量の維持療法を行います。多くの症例でステロイド治療は奏功しますが、減量や中断によって約半数で再発が見られます。その場合、ステロイドの増量や免疫抑制薬の併用などが行われていますが、再発時の治療法はまだ確立されていません。欧米では、再発症例においてリツキシマブが有効との報告があるが、本邦では保険適応外です。